開発経済学とその他応用分野を学ぶ院生

人間万事塞翁が馬を大切にしている応用経済学徒. 2020年4月から開発・計量・プログラミング関連の記事を書きます.

【感想】走ることについて語るときに僕の語ること(What I Talk About When I Talk About Running)

村上春樹さんの走ることについて語るときに僕の語ることを読んだ。

f:id:econgrad:20200919184958j:plain

 

この本は小説家でありランナーでもある村上さんのエッセイ集(村上さん本人はメモワール(回顧録)と呼んでいる)である。彼は33歳でランニングを始め、30年以上毎日平均10km走る生活を続けいてる。これまで何十回も世界各地の大会でフルマラソンを完走しており、トライアスロンや100kmウルトラマラソンも何度も完走してきている。

 

「小説をしっかり書くために身体能力を整え、向上させる」ことが走ることの第一目的であると言う。彼の仕事として小説を書き続ける力の源泉を、「走ること」と「彼の人生観」と絡めながら語ってくれる。話は村上さんがどのようにしてランニングを始めたのか、これまで参加してきた大会やそこでの完走までの感想、そして30年以上小説家(ランナー)として走り続けてきた経験から学んだことが書かれており、創造をする上で規則正しく健康的な生活することがどれほど重要か教えてくれる。

 

これ以上の説明は不要である。私の感想としては、修士課程入学前に出会っておきたい本だった。早く読んでおきたかった習慣に関する本と言えば、できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのかもある。研究活動は情熱だけでは継続することが難しい。いかに工夫して走り続けるかが重要だ。できれば、ゆっくりでもいいから歩かずに、走り続けて。村上さんは少なくとも最後まで歩かなかった。

 

前書きで引用されている、村上さんがパリで読んだ雑誌に書かれていたランナーのコメントが印象的だった。"Pain in inevitable. Suffering is optional." これはそのランナーのマントラ(呪文)であり、マラソンのレース中に自らを叱咤激励するために頭の中で唱えている言葉だそうだ。訳せば「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」のようになる。「きつい」と感じることは避けようのない事実だが、「もう駄目」かどうかは自分次第ということだ。これはマラソンやランニング以外の生活で経験することにも通ずるのではないかと思う。カッコいい言葉なので、さっき紙に書いて部屋の壁に貼り付けた。

 

ちなみにこの本のタイトルは、レイモンド・カーヴァーの短編集のタイトル愛について語るときに我々の語ること(What We Talk About When We Talk About Love)を原型にして決められている。村上さんが2006年に翻訳した作品である。

 

前回適当に書いて投稿した読書感想が以外に人気だったらしく、少し続けてみようと思った。さて、私は晩ご飯を食べてから(今日も)ランニングをしてくる。

econgrad.hatenablog.com