開発経済学とその他応用分野を学ぶ院生

人間万事塞翁が馬を大切にしている応用経済学徒. 2020年4月から開発・計量・プログラミング関連の記事を書きます.

Placebo Analyses・Falsification Testsについて:実証ミクロ計量関連記事(2)

緊急事態宣言が発令され、大学が閉鎖された。当然、研究科棟・研究室へも入ることができない。私は人生を緊急辞退したいと思う。
 
...
 
実証ミクロ計量関連記事(1)はこちら  

本題・使い方と解釈について

実証論文を読んでいると、Placebo AnalysesやFalsification Testsという言葉が出てくる。初めて見たときは学部4年生だったか修士1年のときだった。特に英語に精通していないと「なんそれ?プラシーボ?」となる。
 
Placebo(偽薬)やFalsification(偽造・誤り)が意味するように、本筋とは関係していないものを対象とする。具体的には、アウトカム(被説明変数)を、本来は関心のあるXと関係していない(Xの影響は受けない)ものに置き換えて、分析を行う。Athey & Imbens (2017, JEP)では次の一文で説明されている:"In a placebo analysis, the most widely used of the supplementary analyses, the researcher replicates the primary analysis with the outcome replaced by a pseudo-outcome that is known not to be affected by the treatment."
 
適切ではないし現実的にもおかしい(?)が、上の条件を満たした1つの例を考える。アウトカムがテストの点数で、トリートメントが補習であるとしよう。この補習は、数学の点数"のみ"を上げる効果があり、他の科目のテストには全く影響を与えないとする。メインの分析では、アウトカムが数学テストの点数になる。有意に点数を上げたという結果が得られたとしよう。ここで行うPlacebo Analyses(Falsification Tests)は、アウトカムを他の科目のテストの点数にし、トリートメントは他のテストの点数には影響を与えない(有意な関係がみられない)ことを示すことが目的となる。
 
多くの論文では、これらは主要結果のあとに、その結果をサポートするためにrobunstness checks(頑健性チェック)などと並べて報告されている。
 
一点注意するべきこととして、昨今厳しく言われているのが、statistical significanceとeconomic significanceは別物であるということだ。すなわち、必ずしも有意じゃないからこれらのテストはパスできた、という結果にはならないのである。例えば、メインで推計されたトリートメントの係数が有意で(絶対値で)かなり小さい値であるのに対し、placebo analysesで推計された係数は有意ではないがかなり大きい値だとしよう。この場合、影響は無い(無視できる)と結論づけることはできず、読者(査読者)を納得させることは厳しいと思われる。(符号とp値のみに基づく議論は昔の話である。)
 

参考文献

引用した文章以外何も参考にしていないが、もう少し詳しく(真面目に)学びたい方は以下の論文が参考になる。真面目に学んでないから知らないだけかもしれないが、あまり教科書ではこれらの説明は見ない気がする。  
Athey, Susan, and Guido W. Imbens. 2017. "The State of Applied Econometrics: Causality and Policy Evaluation." Journal of Economic Perspectives, 31 (2): 3-32.

 

econgrad.hatenablog.com

econgrad.hatenablog.com

 

f:id:econgrad:20200409143852p:plain