開発経済学とその他応用分野を学ぶ院生

人間万事塞翁が馬を大切にしている応用経済学徒. 2020年4月から開発・計量・プログラミング関連の記事を書きます.

ミクロ経済学:ラグランジュの未定乗数法の解法と偏微分(効用最大化問題)

学部生が中~上級ミクロ経済学、もしくはマクロ経済学を勉強していく上で、多くの人は1度ラグランジュの未定乗数法で苦戦、つまずくのではないでしょうか?
私も例外ではなく、まず初めて偏微分記号  {\partial} をみた時はビビって教科書の該当ページを飛ばしました。 ですが、臆することはありません。(偏)微分の定義にしたがって解けば簡単です。
偏微分とは」を真剣に考えれば大変ですが、何事もはじめは「なんとなくできる」で問題ないでしょう。

何度も教科書を読み問題を解いていく過程で理解は深まるはずです。

早速解いていきましょう。

f:id:econgrad:20180228202636j:plain

ラグランジュ関数を使って解く

お馴染みの、コブ=ダグラス型効用関数の効用最大化問題を考えます。

効用関数を 
{\displaystyle
u(x_1,x_2)} = {x^a_1}{x^{1-a}_2}
予算制約式を 
\displaystyle
{p_1 x_1 + p_2 x_2} = {I} とし、この2式から需要関数を求める。

Step 1: 効用最大化問題を定義する

\begin{equation} \max_{x_1,{\space}x_2}{x^a_1 x^{1-a}_2} \end{equation} \begin{equation} {s.t.{\space}p_1 x_1 + p_2 x_2 = I} \end{equation}

note1: maxの下の {x_1} {x_2}の意味は、この2つの xを動かして最大化する(maximize)という意味。

note2: s.t. というのは、"subject to"(〜の制約のもとで)という意味。

Step 2: ラグランジュ関数( L)を作る

\begin{equation} {L(x_1,{\space}x_2,{\space}\lambda)} {{\space}=x^a_1 x^{1-a}_2} {+{\space}\lambda{\space}(I-p_1 x_1 - p_2x_2)} \end{equation}

note3:  {L(x_1,{\space}x_2,{\space}\lambda)}の意味は、ラグランジュ関数 (L)は、 x_1,{\space}x_2,{\space}\lambda,の3つの変数から構成されているという意味。

note4:  \lambdaはラムダと読み、ここではこの変数自体に意味はない。効用関数と予算制約式を繋げ1式にする役割を果たしている。

note5:第二項の(・)の中は、予算制約式の Iを固定して、左辺を右辺に以降した形。

Step 3: ラグランジュ関数を偏微分して  =0{\space}とする  

\begin{equation} \frac{\partial L(x_1,{\space}x_2,{\space}\lambda)} {\partial x_1} {=ax_1^{a-1} x_2^{1-a} - {\lambda} p_1 = 0} \tag{1} \end{equation} \begin{equation} \frac{\partial L(x_1,{\space}x_2,{\space}\lambda)} {\partial x_2} {=(1-a)x_1^a x_2^{-a} - {\lambda} p_2 = 0} \tag{2} \end{equation} \begin{equation} \frac{\partial L(x_1,{\space}x_2,{\space}\lambda)} {\partial \lambda} {=I - p_1 x_1 + p_2 x_2 = 0} \tag{3} \end{equation}

Step 4:  \lambda =の形に変形させ、あとは指数計算をして代入

\begin{equation} \ ①{\space}⇔{\space} ax_1^{a-1} x_2^{1-a} = \lambda p_1{\space}⇔{\space} \lambda = \frac{ax_1^{a-1} x_2^{1-a}} {p_1} \tag{1'} \end{equation} \begin{equation} \ ②{\space}⇔{\space} (1-a)ax_1^a x_2^{-a} = \lambda p_2{\space}⇔{\space} \lambda = \frac{(1-a)x_1^a x_2^{-a}} {p_2} \tag{2'} \end{equation} (1')と(2')より、 \begin{equation} \frac{ax_1^{a-1} x_2^{1-a}} {p_1} = \frac{(1-a)x_1^a x_2^{-a}} {p_2} {\space}⇔{\space} \frac{ax_1^{a-1} x_2^{1-a}} {(1-a)x_1^a x_2^{-a}} = \frac {p_1} {p_2} \end{equation} \begin{equation} ⇔{\space} \frac{a}{(1-a)}\frac{x_2}{x_1} {\space}⇔{\space} x_2 = \frac {1-a}{a} \frac{p_1 x_1}{p_2} \end{equation}

この x_2を、最適解が満たす2つ目の式である(3)、(これは予算制約式と同じ)に代入。
\begin{equation} p_1 x_1 + p_2 \left (\frac{1-a}{a} \frac{p_1 x_1}{p_2} \right) \end{equation} \begin{equation} ⇔{\space} \frac{a}{a} p_1 x_1 + p_1 x_1 \left (\frac {1-a}{a} \right) = I \end{equation} \begin{equation} ⇔{\space} \frac{1}{a} p_1 x_1 = I {\space}⇔{\space} x_1 = \frac {aI}{p_1} \end{equation} となり、 x_1について解くことができた。 x_2についても、同様に解き、\begin{equation} x_2 = \left( \frac {1-a}{a} \right) \left( \frac{p_1}{p_2}\right) \left( \frac{aI}{p_1} \right) = \frac{(1-a)I}{p_2} \end{equation}

Step 5: 需要関数として示しす

\begin{equation} x_1 (p_1, {\space}p_2,{\space}I)=\frac{aI}{p_1} \end{equation} \begin{equation} x_2(p_1, {\space}p_2,{\space}I) = \frac{(1-a)I}{p_2} \end{equation}

簡単な説明

私が一番迷ったのは、予算制約式をラグランジュ関数の中に放り込むとき、左辺を右辺に移項させるか、右辺を左辺に移項させるのか、ということでした。
この疑問への解答は、動かない方から、動く方を引くということです。

つまり、初めに最大化問題を定義したときに、 xを動かして最大化すると定義したので、動かないIから動く xを引いてやるのです。この方が計算が楽になります。

余談

どうでもいい話ですが、この記事はMarkdownでの編集にしてから、初めてTexを使用して書きました。はてなMarkdownを使って数式を書く場合、どの記事をみても [tex: から始めないといけないと書いていますが、ChromeMarkDown Preview Plusというのをダウンロードしてオプションを少しいじったら、[tex: 無しでも数式を書けるようになりました\(^ω^)/。
これからは、これまでのような内容 + 自分の統計学や計量など数学の勉強のアウトプットを通じた復習として活用できればと思います。

また、計算ミスや誤値などがありましたら、お手数ですがコメント欄にて報告していただければ幸いです。

引用などはしていませんが、一応参考書を載せておきます。

学部生で(ミクロ)経済学を勉強したい、経済学部生・学生ではなく経済学を勉強したいけどどの本・教科書がいいか分からないという方におすすめします。もちろん、院試のミクロ対策としても素晴らしい教科書です。